サステナビリティ経営で「本当に重要な課題」を見極める ーマテリアリティー
マテリアリティとは?
企業がサステナビリティに取り組むことは、今や特別なことではなく、経営そのものの重要なテーマになっています。しかし、環境や社会に関する課題は非常に幅広く、気候変動、生物多様性、人権、労働安全、資源循環、水資源など、挙げ始めるときりがありません。こうした多くの課題にすべて同じように取り組むことは、現実には難しいでしょう。
そこで重要になるのが、「マテリアリティ(重要課題)」という考え方です。
マテリアリティとは、数あるサステナビリティ課題の中から、自社の事業や価値創造との関係、また社会・環境への影響をふまえ、優先的に注力すべき課題を明確にすることを指します。「重要課題」と聞くと、それ以外の課題は取り組まなくてもよいと誤解されることがありますが、そうではありません。限られた経営資源の中で、より重点的に取り組むテーマを定め、戦略的に経営へ組み込んでいくための考え方です。
企業ごとに事業内容や市場、顧客、サプライチェーンは異なります。そのため、マテリアリティも企業ごとに違ってきます。同じ業界の企業であっても、目指す方向性や事業環境が異なれば、優先すべき課題も変わるのです。マテリアリティを特定する際には、自社の戦略や事業特性だけでなく、外部ステークホルダーの期待や規制動向も踏まえて、重点的に取り組む課題を見極めることが重要です。
マテリアリティの考え方
では、マテリアリティはどのように考えればよいのでしょうか。
近年、国際的にも重視されているのが、サステナビリティ課題が企業に与える影響と、企業が社会や環境に与える影響の両面から課題を評価するという考え方です。
一つ目は、「フィナンシャル・マテリアリティ」です。これは、サステナビリティに関する課題が、企業の財務や中長期的な価値創造にどのようなリスクや機会をもたらすかという視点です。
もう一つは、「インパクト・マテリアリティ」です。こちらは、企業の事業活動が環境や社会にどのような影響を及ぼしているかという視点です。そして、この二つの視点をあわせて課題を捉える考え方は、「ダブル・マテリアリティ」と呼ばれています。
なお、ダブル・マテリアリティは、二つの視点の両方で重要性が高い課題だけを対象とするものではありません。企業への財務的影響、または企業活動が環境・社会に与える影響のいずれかが大きい場合にも、マテリアリティとして位置付けられることがあります。
例えば、自動車メーカーが燃費性能の高い自動車を開発するケースを考えてみましょう。企業にとっては、燃費性能の向上は商品の競争力を高め、将来の環境規制への対応にもつながるため、財務や中長期的な価値創造に関わる重要なテーマになり得ます。一方、社会や環境の視点から見れば、走行中のGHG排出量の削減につながり、気候変動への対応にも関係します。このように、一つの課題を企業への財務的影響と、社会・環境への影響の両面からとらえることが、ダブル・マテリアリティの考え方です。
マテリアリティは見直しを続けるもの
また、マテリアリティは一度決めたら終わりではありません。社会課題や法制度、技術革新、市場環境に加え、ステークホルダーの期待も常に変化しています。そのため、外部環境の変化やステークホルダーとの対話をふまえながら、定期的に見直していくことが欠かせません。数年前には重要性が高くなかったテーマが、社会の変化によって、企業の財務や中長期的な価値創造に大きな影響を与える課題になることも珍しくないからです。
サステナビリティ経営では、「何に取り組むか」だけでなく、「何を重点的に取り組む課題として位置付けるか」が重要です。自社の成長と社会・環境への影響、その両方を見つめながら重要課題を見極めることが、持続可能な企業経営への第一歩と言えるでしょう。マテリアリティは、単なる優先順位付けではなく、限られた経営資源をどこに重点的に配分し、どのように価値創造につなげていくかを示すものなのです。
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