「環境にやさしい」は、本当に環境にやさしいのか――企業に求められるグリーンウォッシュとの向き合い方
「なにを伝え、なにを伝えていないのか」
「エコ」「カーボン・ニュートラル」「ネット・ゼロ」――。企業の商品やサービス、広告、サステナビリティ報告書などで、環境に配慮したことを示す言葉を目にする機会が増えました。消費者や投資家の環境意識が高まるなか、企業にとって環境への取り組みを分かりやすく伝えることは、ますます重要になっています。一方で、その「伝え方」が新たなリスクになっています。それが「グリーンウォッシュ」です。
グリーンウォッシュとは、環境に配慮しているように見せながら、実際にはその科学的な裏付けが十分でなかったり、環境面での取り組みを実態以上に強調・誇張したりすることです。例えば、取り組みの一部分だけを切り取って「環境にやさしい」と訴える一方で、別の側面では環境に大きな負荷を与えているケースも含まれます。つまり、明らかな虚偽だけではなく、「なにを伝え、なにをを伝えていないのか」という情報の出し方そのものが問われるのです。
こうしたことは、環境や人権をはじめとするサステナビリティの取り組みを実質的に停滞させたり、生活者の消費行動における正確な判断を妨げたり、企業間の公正な競争を妨げるなどの問題にもつながります。
広がりをみせるグリーンウォッシュの対象
こうした問題は、最近では「リジェネラティブ(再生型)」という言葉にも広がっています。2026年6月に公表された欧州の団体による共同声明(※1)では、企業のブランドやEUの政策において「regenerative agriculture(再生型農業)」という言葉が広く使われる一方、その中には、わずかな環境配慮を加えるだけで、実質的には環境負荷の大きい農業を「再生型」と見せてしまう懸念が指摘されています。
ここで重要なのは、「リジェネラティブ」という言葉そのものを否定することではありません。共同声明も、オーガニックやアグロエコロジーの原則に基づく真に再生型の取り組みについては、変革を支える重要な存在として評価しています。問題は、言葉の定義が曖昧なまま、狭い成果指標だけを示して「再生型」と訴えることです。そうなると、農業システム全体を変えるのではなく、既存の仕組みを部分的に修正するだけになり、より本質的な変革への投資や政策的支援がそらされる可能性があります。
マーケティングを超えて、実質的な変化の説明を
では、企業は何に注意すればよいのでしょうか。第一に、環境に関する主張には、科学的な根拠と検証可能なデータを伴わせることです。第二に、都合のよい成果だけを示すのではなく、製品や事業のライフサイクル全体を捉え、重要な情報を省略しないことです。英国の「グリーン・クレーム・コード」でも、「真実かつ正確であること」「明瞭であること」「重要な情報を省略・隠蔽しないこと」「全ライフサイクルを考慮すること」「立証されていること」などが原則として示されています。
グリーンウォッシュは、単なる広告上の問題ではありません。規制上の問題につながるだけでなく、企業への信頼やブランド価値を損なう可能性があります。実際に、環境配慮を誇張した広告について、誤解を招くとして撤回を求められた事例もあります。グリーンウォッシュは企業にとって、顧客からの信頼の低下やブランドの棄損、法令違反の場合には多額の制裁金の支払いなども発生しうる、リスクとなるのです。
サステナビリティにおいて大切なのは、「環境に良い」と言うことよりも、「なぜ良いのか」を説明できることです。言葉を先行させるのではなく、事業そのものをどのように変えていくのか、その変化をどのように測り、第三者にも確認できる形で示すのか。これからの企業には、根拠のない情報や誇張した表現を避けるなどはもとより、マーケティングの観点よりもさらに一歩深い、透明性と説明責任が求められています。
「言葉よりも行動を」。再生型農業をめぐる欧州の問題提起が示すように、サステナビリティの信頼性は、掲げる言葉ではなく、その言葉を裏付ける実際の変化によって決まります。企業にとってグリーンウォッシュを避けることは、リスクを回避するためだけではありません。本当に持続可能な社会への移行に、自らの事業をどう結びつけるかを問い直す機会でもあるのです。
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